新型コロナで変わる、
建築と都市のあり方[後編](松本丈)

新型コロナで変わる、<br/>建築と都市のあり方[後編](松本丈)

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今までは、地方でも、過疎化して経済も弱体化してきたからこそ、どうすれば人が集まるようにできるのか、集積して密度を上げるようにできるのかが主なテーマでしたし、私も人が集まる状態をいかにつくるのかを念頭に活動をしてきました。

しかし、アフターコロナの世界観では、程よく人が距離を保ちながらも繋がりを持つような、過密まではいかない程よい集積具合が、リアルとヴァーチャルを織り交ぜながら模索されていく気がします。

そうすると、偶然にも、過密ではないが、何もないわけではないという程よい密度の地方都市は今後チャンスに思えます。

また、例え5GやVR技術が浸透しても、すべてがリアルと遜色ないほどになるとは、まだ思えません。人と近くにいるからこその体験や空気感、熱意などは、まだ会わないと感じることができない。また、実際に旅行に行くなどの体験も、移動しなくても家で肌感覚まで感じるまではまだ技術は追いついていない。そういう中では、まだ人はリアルに会うことや移動することを完全に捨てることはできず、でもオンライン化がある程度進んだことに対応する、建築や都市構造になるのではないかと思います。(これも技術の進歩のスピードで変わる話ですが)

リモートワークやオンラインツールによって、集まらなくてもよい部分は、集まらないで済むようになっていき、定着してしまうと思います。オフィスワークや教育でも、どうしても会わなくてはならない部分だけが残るはずです。オフィスで残る機能は、熱意を伝えなくてはならない局面や合意形成の場面、つまり営業活動や商談ができれば良いので、それは外の貸し会議室やカフェでも良かったりします。ただ、会社の格や信用をオフィスの豪華さとかでも客は判断もしているので、商談スペースとしては相応のしつらえは必要でしょう。

教育では、授業自体はオンライン化しても、社会性や共同生活を学ぶ学校生活そのものや部活動というものは、会わないといけないと満たせないので何らかの形で残すべきだし残るだろうと思います。

ということは、今のオフィスや学校は消えてしまわないまでも、面積は縮小してしまうように思います。一方で、家も在宅ワークや授業が前提のつくりに変わっていく。マンションの共用部がリモートワーク対応になっているなどはすでに始まっているようです。どこでも働くしどこでも学ぶ、でもリアルに会うことも捨てはしない。こんな風に、オフィスと学校を考えるだけでも、色々と機能が解体されていきそうと思えますし、今のような大きな面積は必要なくなるのでは?と思います。

飲食業では、集まらなくてもオンライン飲み会とかやっているのを見ると、人はやはりコミュニケーションしたい生き物なのは良く分かるので、いくらデリバリーやテイクアウトが進んでも、リアルに集まるという行為は残るように思います。しかも、オフィスや学校が解体されて、商談やミーティングの機能が今以上に飲食の場が使われると思うと、以前より個室のニーズが増えるのではと思います。

そして、コロナの話ではないですが、AIや自動運転の技術によって、車社会の地方でも、遠くない未来に、一家に一台の車ではなく、オンデマンド交通や車をシェアして使うような時代も重ねて訪れます。そうなると駐車場需要が減り、今の駐車場ビジネスは終焉を迎えるのではないか。その駐車場跡地は、人口減の時代でもあるので、新築で何かが建てられることは、建て主が相当なリスクを負うので行われず、別の暫定利用のような使い方が増えるのではないかと思います。

コロナでのオンライン化の波とAIの自動運転技術によって、都市でかなりの面積を占めているオフィスも学校も駐車場も、今のような面積は必要なくなり、不動産相場が下がると共に、空いた床や土地では新しい使い方やビジネスが生まれていく。

また、人口減とともに行政の税収減で金がないというトレンドは今も変わらず、行政サービスや公共施設は現状維持はできず、市民が自治を担っていく必要がある。災害時などは特にそう。行政頼みではどうにもならない。そして、災害は今後も何が起こるか分からないけど、頻発していくのは想像に難くない。

こういうことが重なって起こっています。いやあ、なんとも痺れる時代です。

ちょっと前までの前提条件が、全然通用しない。何かを企画するにも、こんな時代でも何なら打ち手として有効なのか、ちゃんと考えないといけない。答えはないので、試行錯誤してみるしかない。

古今東西、生き残る都市の条件は、多数の人が試行錯誤をしてイノベーションや新しいものや仕事が生まれる状況をつくれるかどうかということのようです。ルーチン業務や管理ばかりで官僚化したり、大企業の傘の下で過去の繰り返しばかり始めたときに衰退が始まるようです。

これまでは、大都市の人の集積と密度が、都市を発展させるクリエイティブさを担保してきたんですが、集積と密度に頼らなくても、人がクリエイティブになる状況を意識的に仕掛けられる都市が、次の時代に生き残れるということなのかと思います。

タタキアゲジャパンでも、こんな時代ではありますが、地方都市が大都市に優位に立つチャンスと捉え、多くのチャレンジや試行錯誤をどうやったら増やして応援できるか、我々自身でも試行錯誤を続けていきたいと思うところです。

こんな妄想をしながら、今は、一刻も早いコロナの収束を願いつつ在宅ワークに励みたいと思います。

思うように人にも会えず、移動もできず、人間の根源的欲求に蓋をするようでストレスフルな日々ですが、どんなにあがいても今できることしかできませんので、できないことには逆らわず、人に優しく心穏やかに過ごせたらいいなと思います。

NPO法人TATAKIAGE Japan 理事
一般社団法人TATAKIAGE Japan 理事
松本 丈

 

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