
「22年卒学生の76.3 %が「地方でのインターンシップ」に参加希望 =学情調べ=」という調査結果を目にしました。調査結果によれば、「『UIターンや地方での就職』を希望していない学生も含めて、多くの学生が『地方で実施されるインターンシップ』に関心を持っていることが分かった」そうです。また、「オンラインでの参加であれば、都市部の学生が地方企業のインターンシップに参加することも容易になり、今後、『オンライン地方インターンシップ』が1つのトレンドになる可能性もある」とのこと。
タタキアゲジャパンが2017年春より実施している「地域実践型インターンシップ」は、初回は、いわきアカデミア推進協議会の事業として立ち上がり、その後、復興庁の「復興・創生インターンシップ事業」として実施(いわきアカデミアは現在も協力団体としてサポート)しているもので、これまで7回のインターンシップで延べ37社の企業課題に取り組んできました。8回目となる、2020年夏(2020年8月~9月開催)は新型コロナの影響により、原則オンラインでの開催となります。
■「見学型」「体験型」「実践型」インターンシップの違い
ところで、インターンシップには、「見学型」、「体験型」「実践型」の3パターンあることをご存知ですか?「見学型」は、企業のCSRや社会貢献の一環として、「体験型」は、企業の採用活動の一環として、いずれも1~2週間という比較的短い期間で行われることが多いようです。他方、私たちの取り組む「実践型」は、これらとは少し目的が異なり、より長期間で、地域の企業が抱えている経営課題に対して、学生と経営者が協働して解決に取り組むことで、受け入れ企業の経営革新などを目指すものです。
受入先の企業・団体は、日頃取り組みたくても社内のリソースが使えず、手を付けることができない課題の解決に学生と協働して取り組むことができます。また、学生という外部人材の受入れは、新しい風や熱を入れることになりますので、社内の活性化に加え、マネジメント力の強化にもつながります。
一方、学生は、約1ヵ月間、共同生活を送りながら就業体験を経験することにより、キャリア観の醸成や課題解決能力の向上を図ります。また、私たちとしては、いわき市や双葉郡を第二の故郷と思えるくらいの愛着を持ってもらい、将来的には交流・定住人口の拡大につなげることも期待しています。
■Guesthouse & Lounge FARO iwaki の事例
このように、「地域実践型インターンシップ」は、学生の強みを生かすことで様々な効果を出すことができますが、1つ事例を紹介します。
例えば、2019年春に、「福島県いわき駅前につくるゲストハウス&ラウンジのコンセプトを探り出せ!」というテーマで学生3名を受け入れた、Guesthouse & Lounge FARO iwaki の事例です。このプロジェクトでは、開業に向けて準備を進めていたゲストハウスのコンセプトづくりに取り組みました。いわき駅前のお店100件に対しヒアリングをし、結果として「すでに街中にあるコンテンツを活かして、街全体をゲストハウス化する」というコンセプトを提案するに至りました。学生によるヒアリングが、経営者の想いを街の人たちに繋げるという結果も生みました。また、「駅前にゲストハウスができたらどうか?」というテーマで開いた妄想飲み会には、80名ほどが集まり、普段は人通りの少ない駅前がにぎやかになりました。このようなインターン生による仮説検証を通じて、事業も大きく前に進むことになり、ゲストハウスを作る前段階から町の人を巻き込むということに、学生が一役買った形となった事例でした。
■学生の強みを生かしたプロジェクト設計で、受け入れ企業の経営力を強化
私がこれまでコーディネートをしてきて感じるのは、学生の強みは「熱量と行動量」だということです。このプロジェクトは、「足で稼いで徹底的にリサーチする」というプロジェクト設計と学生の強みがうまくマッチングした事例と言えます。
このように、単に学生の成長を促すのではなく、経営力の改善、マネジメント力の強化、新規事業の仮説検証の機会など、受入企業にとって多くの効果が期待できるのが、実践型インターンシップです。よく、地方には面白い仕事、やりがいのある仕事がないと言われますが、経営力を強化していくことは、結果として会社や地域の活性化に繋がります。インターン学生受け入れの機会を存分に活用していただき、それが地域に面白い仕事を生み出すことに繋がればと思います。
■地域の交流人口の拡大という側面も
また、前述のプロジェクトは、参加した学生3名がその後も継続的に受入企業と関わり続けるなど、地域の交流人口の拡大という点からも成功した事例でした。この事例に限らず、学生は継続して関わった会社、地域に愛着を持ち、インターン終了後も遊びに来てくれる傾向があります。2020春のインターンシップに参加した学生の皆さんは、有志で「やっぱ、ふくしま」というサイトを立ち上げました。それぞれのインターン先での体験について、等身大で綴ったこのサイト。なんとコンセプトは、「やる気のある若者を福島に引きずり込む」です。さらに、今年はいわき市での就職を決めた学生も出ました。
タタキアゲジャパンは、主にいわき市や双葉郡南部の企業・団体のプロジェクトをコーディネートし、課題設定や学生の受入れ、期間中のフォローアップなどを担当しています。2020年夏は、計6団体で21名の学生の受入が決定しました。原則オンラインで地域の企業の課題解決に取り組むインターンシップは、私たちにとっても新しいチャレンジとなりますが、オンラインでの実施という前提でプロジェクトを設計し、これまでよりも研修時間を多くとったり、学生とのコミュニケーションの場を意識的に増やしたりなど、工夫しながら進めていく予定です。9月18日に開催予定の成果報告会でどのような成果が聞けるか、今から非常に楽しみです。
この「地域実践型インターンシップ」は、2021年春も開催します。ご興味のある企業・団体の方は、ぜひタタキアゲジャパンまでご連絡ください。
NPO法人TATAKIAGE Japan 理事長
一般社団法人TATAKIAGE Japan 代表理事
小野寺孝晃