背景にある仕組みを理解して、
まちを変えていく。(松本丈)

背景にある仕組みを理解して、<br/>まちを変えていく。(松本丈)


自分が育ったまちを変えたい、面白いものにしたいと思ったとき、
色々な経験をした今だからこそ、昔は見えなかったまちの背景に流れる仕組みが見えるようになってきた。

今回は、これからまちで何かをしようという方のために、そんな内容で書きたいと思う。

まず、見えている風景のほとんどすべてには、そうなっている理由があるという風に思った方がよい。逆に理由がないことは何一つないと言った方が正しいかもしれない。

その風景となっている大きな背景には、もちろん歴史や社会的情勢などもあるけれど、今回お伝えしたい視点は、「誰かが所有し管理している資産である」ということである。見渡してみると、誰のものでもないまちの風景はほぼない。土地や建物などには当然不動産オーナーがいるし、山にも畑にも所有者はいるし、海や川でさえ行政が管理する資産である。


例えば、
なんで地方の駅前は、どんどん駐車場だらけになっていくのか。
公園とかの公共空間は、どうして自由に使えずに禁止事項が多いのか。なぜ草ボーボーになっていることが多いのか。

こうしたことに向き合う道しるべが、先の誰の所有(資産)なのかを理解することである。

また、資産であるからには、「どんな経済的な仕組み」で動いているのか、という側面がある。この2つの背景を理解できると、どうすれば動かすことができるのかが分かるようになってくる。

まず、民間の所有であれば、当然、収益が上がるように、損をしないように、という思想でできている。なので、駐車場の例でいうと、車社会で公共交通が弱い地方では、駐車場の需要は一定数あるので、駐車場にしておくと儲かる。または儲からないまでも損をしないということがあるから駐車場になる。

例えば、とあるバブル期に建てられ老朽化した建物の不動産オーナーが、新築に建て替えるかどうかと悩んだときに、新築して何億円も投資するには、人口減の時代で建てても借り手が見つかるかどうか先が見えないから、じゃあリスクを考えて駐車場にしておくかという理由で駐車場がどんどん増えていく。個別の資産運用としては、極めて合理的なのである。それを否定することも止めることもできない。

問題は、駐車場が増えることで、どんどんまちの魅力が低減していき、目的地がなくなっていくことである。仮に、地方の中心市街地がすべて駐車場になったとして、誰がそこに来るのか。駐車場しかないまちには誰も来はしないだろう。そう、駐車場自体は目的地ではなく、行きたい場所があってそこに寄りそう形で初めて成り立つ業態なのだ。なので、個別の不動産オーナーの選択としては正しいが、まちという総体で見た時には、正しい選択ではない。いずれまちの魅力は低減していき駐車場すら成り立たなくなってしまう。そこに駐車場のジレンマがある。

それでも、駐車場ばかりでまちが面白くないと言ったとき、じゃあ駐車場を辞めて建物を建てて良いテナント入れてまちを楽しくしてほしいと言っても、個別の不動産オーナーだけではリスクを取りにくい時代なので、まちは変わらない。

そういう背景がわかると、現実には、こんな不確かな時代でも個別の不動産オーナーにリスクや損を負わせず、駐車場を辞めて建物を建てた方が儲かるという状況をつくり、全体としてのまちの魅力も上げるという難しい方程式の解をつくる、ということに向き合う戦略を立てないといけないと気づくのである。

2つ目の例で出した公園は、公共資産なので広義では市民みんなのものであり、そして行政が市民を代表して(代行して)管理している。また、民間とは違い、収益を上げることを主目的としておらず、公共の福祉の増進が目的である。公共の福祉とは、簡単に言うと、市民が休憩できること、交流できること、防災拠点になること、などである。

また、収益を上げることを目的としていないとはいえ、管理にはお金も労力もかかっている。ただ、人口減・税収減の時代では、管理するお金を税金でまかなえなくなってきていたり、また、これまでボランティアで動いてくれた地区の人が高齢化していることもあったりして、満足に草刈りもできないという状況にもなってきている。それでも、市民はそんな状況とは知らずに、草が生えているからなんとかしてほしいとクレームばかりが来るので、実は行政も困っている。

こういう背景があることを理解できると、公園に民間によるカフェなどの出店をしてもらうことで、公園に来る人のためになりつつ、売り上げの一部を徴収して管理費にあてようという企画が通る理屈がわかってくる。事実、全国の公園には、様々な形で民間とコラボをして、公共の福祉の増進を図りつつ、管理費を捻出するというスキームが多数ある。

他にも、田園風景って美しい田舎的風景として保全すべきとか話がでるけど、誰の所有でどんな経済活動がされているかを考えると打開策が見えてくる。

田んぼって綺麗だから保全しようと言っているだけでは風景は守れない。

まちの空間や風景には、個別にもっと色々な事情や利権関係があったりするので、実際には所有と経済的背景が分かっただけでは足りないのだけど、まずこの視点を持ってまちを眺めてみると、まちを変える入り口には立てるかなあと思います。

 

NPO法人TATAKIAGE Japan 理事
一般社団法人TATAKIAGE Japan 理事
松本 丈

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