
●特定非営利活動法人 中之作プロジェクト
【取り組んだプロジェクト】
海辺の町の魅力を活かし新たに作り出す、10年後・50年後の中之作ライフプランづくり!
東日本大震災をきっかけに立ち上がったNPO法人「中之作プロジェクト」は、拠点であるいわき市中之作・折戸地区において、古民家・空き家の再生と、その建物を活用する事業を通して、地域のにぎわいや癒しの場を提供し、新しい港町のライフスタイルの提案に取り組んでいます。
今回のプロジェクトでは、
(1)地域内の空き家に関する聞き取り調査&中之作・折戸空き家3Dマップの作成
(2)「空き家活用の勉強会」での調査結果の発表
といった活動を通して、中之作・折戸地区のポテンシャルを生かした、新しい暮らしのあり方、新しい事業プラン「中之作・折戸空き家情報ステーション(仮)」の始動をともに考えることがゴールでした。
【1ヶ月の成果】
インターンに参加した3名の学生は、まず、地域住民の方に空き家問題に関心を持ってもらうため、中之作・折戸地区の聞き取り調査を進め、「空き家3Dマップ」を作成するというミッションに取り組みました。「空き家3Dマップ」は、以下の4つのレイヤーからなり、地域のパブリックスペースや空き家、空き地の数の移り変わりを比較し、インターン生の活動や、未来のライフスタイルなど様々な角度から中之作・折戸地区を知ることができるマップです。
ー空き家3Dマップの中身ー
①インターンの軌跡
1ヶ月間のインターンの中で、中之作・折戸地区に住む9名の方へ、この地域の生活や歴史、空き家の情報についてのヒアリングを実施しました。ここで得た情報をもとに、3件の空き家の測量を行いました。さらに、DIYでベンチを制作し、人が集う公共スペースを実際に作り出しました。このような活動を1枚のマップに落とし込みました。②パブリックスペースの数の推移
これは、人が出入りするパブリックスペースの数を1972年と2019年で比較できるマップです。これを見ると、パブリックスペースが大幅に減少している、つまり、地域の交流が減りつつあるということが分かります。③空き家・空き地の数の推移
このマップでは、1972年、1990年、2000年、2015年、2019年の地図を比較することで、空き家や空き地の数が年々増加し、多くの風景が失われていることが分かります。空き家は空き地の予備軍であり、風景を保存するためには、空き家の段階で食い止めることが必要だと実感したそう。④私たちの描く未来
以上の調査をもとに、3名は、残したい風景、未来のライフスタイルという2つの観点から理想の50年後を考えました。インターン生3名が考えた未来のライフスタイルは、「生きがいのあるまち」です。その中でも特に、おじいちゃん/おばあちゃんの世代に注目し、絵画部、釣り部、畑部などの部活動(=趣味の集まり)を立ち上げ、空き家をその拠点にしてはどうかと提案しました。
さらに、生きがいのあるまちを実現するために今できることとして、「空き家情報ステーション」を作ることを提案しました。これは、空き家と空き家を活用したい人たちを繋ぐことを目的とした施設で、部活動の部室や、空き家情報ステーション、移住体験スペース、交流スペースなどを備えたものです。
このような取り組みを通して、50年後の中之作が「地域住民の交流が盛んな生きがいのあるまち」となることを目指します。
3名がインターンシップを通して感じたのは、地域内の交流が増えたこと、地域の魅力を地域の方が再発見するお手伝いができたこと、空き家情報の提供が活発化したこと、などです。一方、ヒアリングの内容をマップに十分に落とし込めなかったことは改善点でした。
そして、3名が学んだのは、空き家問題は人と人との関係性が重要だということ。
インターンの最後に3名は、地域の方と一緒に、中之作に桜の木を植えました。この桜が咲くころ、風景は変わらずに、今よりも交流の増えている中之作であってほしいとし、報告を終えました。
【受け入れ企業・団体からのフィードバック】
3名には、最初の一週間で、ものを作ることの楽しさを知ってもらうようにしました。楽しいことを続けていくうちに、地域の人たちが集まって、いい町になっていく。これがこれからの公共ではないかと考えており、このインターンを通してそれが3人に伝わったのではないかと思います。
インターン生が入ったこの4週間で、町の雰囲気が変わったように感じます。町の中に入り込んで、地域の人と空き家についてさまざまな話をすることができたのは私たちにとっても収穫でした。今回は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため子どもたちを対象にしたワークショップは実現できませんでしたが、これは今後私たちが引き継いで展開していきたいと思っています。