
OVERVIEW intro
浜魂(ハマコン)に参加して思いをぶつけ、プロジェクトの始まりを宣言した人たちは、今、そのプロジェクトをどのように進め、どのような壁に直面しているのか。新企画「浜魂人(ハマコンジン)」では、浜魂に参加した人たちの「今」をレポートします。一人目は、第5回浜魂で「いわきを応援するチームを作りたい」というテーマでプレゼンした坂本雅彦さん。浜魂参加後、ボランティアサポートチーム「EN」を立ち上げ、様々な団体の支援を行なっています。その坂本さんに、現在の課題や浜魂への思いを伺いました。
ENとボランティア
初夏を思わせるような陽気の6月初め。坂本さんから話を伺うために、湯本にある勤務先の温泉旅館「古滝屋」を尋ねました。浜魂に参加した時には就職活動中だった坂本さん。浜魂に参加してすぐに、縁あってこの古滝屋に就職。現在は、早朝に出社し、古滝屋の社員としての仕事が終わると、「EN」の代表として各地のボランティアに駆けつけるという超多忙な生活を送っています。
坂本:今ボランティアで関わっているのは里山整備のプロジェクトが多いですね。神谷のいわき万本桜プロジェクト、大久のハイジの里山、時々赤井にある赤井の森というところにも手伝いに行きます。それからアリオスのパークフェスや、この間は小名浜で開催されたオールジャンルモーターフェスのようなイベントの手伝いにも行きました。
浜魂に出て「EN」を立ち上げて、今までに大体 20 名近くのメンバーが加入してくれています。LINEにグループを作って、そこで「今度はこの活動の作業があるよ」っていう情報を流して参加を呼びかけると、そのうち毎回5、6名の人たちがボランティアに参加してくれる、といった感じです。強制ではなくて自由参加なのに、これだけ手伝ってもらえるのはありがたいことですし、古滝屋の里見さん(代表)もENの活動を尊重してくれるので、おかげでとても忙しいです(笑)。
どこも人は足りてない
坂本さんが浜魂に参加したのには、いくつか理由があります。その大きな一つが、いわき市内のボランティア不足。いわき市内では、特に震災後、たくさんの活動が生まれたものの、ボランティア不足から活動が頓挫し、続けられなくなったプロジェクトが少なくないというのです。現在も、その状況は変わっていないと坂本さんは語ります。
坂本:現状は浜魂に参加した時と変わってませんね。どこも人は足りてないです。というか、みなさん「人手はなんぼあってもいい」と。大きなイベントほど、ボランティアは足りていません。ボランティアが足りずに、細かいところでちょっとしたミスが起きて、それが原因でダメになってしまうこともあるようです。せっかく色々なプロジェクトが立ち上がったのに、人手不足で潰れてしまうのは、あまりにももったいないですよね。
ENにももっとメンバーが必要だと思っていますし、このままユルい感じでやっていくんじゃなくて、例えば法人化してみるとか、社会的な信用もアップさせた上で、地域に根ざした団体としてしっかりやっていくほうがいいんじゃないかと思ったりもしています。
本当は、イベントに応じて、このイベントだったら何人、このイベントだったらこういう感じの人、みたいな感じで、各地に散らばって活動していきたいんです。ボランティアといっても好き嫌いはあるし、長く続けてもらうにも、自分が手伝いたいって場所を見つけるのも大事なことだと思うんです。その意味でも、発信力の強化は課題ですね。
ボランティアって、結局は自分の成長のためにやるんだ
坂本さんが課題とした「発信力の強化」について、坂本さんが日々考えているのが「ボランティアの価値を伝えていくこと」だそうです。どういう価値が、ボランティアにはあるのでしょうか。改めて伺いました。
坂本:ボランティアは、本当に色々なことを学べます。例えば、万本桜。代表の志賀さんの大胆な考え方も勉強になりますし、草刈りの機械の使い方や山の整備の仕方など、頭も体も目一杯使って学ばせてもらってます。成長を実感したのがハイジの里山ですね。ハイジの里山に行くと、万本桜で当たり前にやってきたことをしてるだけなのに、すごく頼りに思ってもらえるんです。
各地でイベントやプロジェクトを展開している人って、そもそも会社とか団体とかに左右されずに、自分でやりたいことをやってる人ですよね。だから組織に縛られることなく自由なアイデアで、勝手にプロジェクトを進められる。だからこそ、会社や学校ではなかなか教えられない、プロジェクトの進め方とか、アイデアとか、色々なことを学ぶことができるんです。ボランティアって、結局は自分の成長のためにやるんだと思いますよ。
あと面白いのは、普段の社会では見られない人間関係が生まれることでしょうか。ボランティアには色々な人が集まってくるので、会社の経営者とかも普通に集まってきます。会社では偉い人も、ボランティアでは草刈り機がうまく使えなくて怒られる、みたいなそういうことが起きるんです。人間関係も縮まるし、出会いもあります。将来的にはENで縁結びのボランティアなんかもやりたいと思ってるんですよ。
いわきの知らない場所と繋がれることも大きいですね。いつのまにか、友達もできて、いわきの魅力も知ることができて、休みの日も暇にならなくて、会社じゃ教えてくれないスキルが身について、体を使うからご飯も美味しくて、全部自分のためなのに、最終的に「いいことした」ことになってるっていう。ほんと、すごいですよ。
魅力が伝わらないのは、発信力のなさもありますが、もしかすると「ボランティア」って名前が良くないのかもしれません。「アクティブサポート」って付けてくれた人もいて、実はちょっとそれが気に入ってたりもします。誰かへの奉仕だけじゃなくって、自分の楽しみや成長のために誰かのサポートに回る、ということが当たり前になれば、もっと地域全体が面白くなるはずだと思うんですよ。次に浜魂に出たら、ボランティアじゃない新しい呼び方を考えようってテーマで出たいですね(笑)。
浜魂は覚悟を決める場でした
活動に対する歯がゆさや、運営の難しさなどを吐露しつつも、日々の活動について充実した表情で語ってもらえたのは、やはりボランティアの価値を、坂本さんが誰よりも強く実感しているからかもしれません。最後に、坂本さんにとって「浜魂」への参加は、どんな出来事だったのか、改めて伺いました。
坂本:僕にとっては、浜魂は覚悟を決める場でしたね。本来やりたいこと、やるべきだと思ってたことをやっているので、浜魂に出てから大きなことが変わったというわけではないんですが、とにかく覚悟を決めたこと、自分を追い込んで決断して、みなさんの前で発表したことが、本当に大きかったと思います。
浜魂って「きっかけ」なんだと思いますし、やっぱりみんな「きっかけ」を欲してるんじゃないかと思います。ENもそうです。みんなどこかで地域に関心はあるのに、どうしていいか分からない、情報も少ない。でも、それはとても勿体ないですよね。だから、いわきで何かやりたいって人の最初のきっかけというか、窓口になりたいと改めて思っています。まずは誰かの活動を手伝って、それを楽しんで、仲間が増えて、いわきが楽しくなる。そのきっかけが、ENであり、ボランティアなんです。
活用したプロジェクト

坂本さんのプレゼン 第5回浜魂「いわきを応援するチームを作りたい」